メンタルヘルスマネジメント検定Ⅰ種のお勉強 第2回 社会的責任、法令遵守と リスクマネジメント

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第1章 第2節 社会的責任、法令遵守とリスクマネジメント

学習のポイント

1. 従業員の健康管理に関する問題は、企業の社会的責任(CSR)の重要な構成要素です。

2. リスクマネジメントの一環としても、メンタルヘルスケアに真剣に取り組む必要性があります。

3. 「安全配慮義務」は、判例法理として認められてきましたが、2008年3月に施行された労働契約法第5条に明文化されました。

4. THP指針や快適職場づくり指針のなかでも、ストレス対策やメンタルヘルスケアが言及されていました。

5. 2006年4月に改正労働安全衛生法が施行され、「長時間労働者への医師による面接指導の実施」が規定されました。

6. 2014年に労働安全衛生法が改正され、ストレスチェック制度が導入されました。

1. 社会的責任の一環としてのメンタルヘルスケア

企業の社会的責任(CSR) 企業活動を展開するにあたって、社会的公正や環境などに配慮しながら、消費者、取引先、投資家、地域社会、従業員などの利害関係者(ステークホルダー)に対して責任ある行動を取るとともに、説明責任を果たしていくことが求められます。

企業に対する評価(企業価値)を向上させるためには、利害関係者からの期待に応えることが重要なポイントです。

従業員の働き方に十分な考慮を払い、かけがえのない個性や能力を活かせるようにしていくことは、
企業にとって本来的な責務つまり、従業員の健康管理問題は、CSRの重要な構成要素です。

2. 法令遵守とリスクマネジメント

CSRへの取り組みをおこなうには、まず法令遵守の徹底が必要不可欠です。つまり法令遵守はCSRの前提となります。

公法的規制としての労働安全衛生法等の諸規定を遵守するとともに、私法上企業に課せられた安全(健康)配慮義務を履行することが、当然のこととして要請されます。

私法上企業に課せられた安全配慮義務に違反し、従業員に損害を与えた場合には、企業に民事上の損害賠償責任が生じます。

大手広告代理店における若手従業員の過労自殺事件(最高裁2000年3月24日判決) では、企業が遺族に1億6800万円の和解金を支払いました。

企業内で過労自殺や過労死を発生させるに至った場合、高額の損害賠償責任、企業内のモラール低下、対外的な企業イメージの低落等、甚大な損失を被ります。つまり、リスクマネジメントの一環としても、メンタルヘルスケアに真剣に取り組む必要性があります。

職場におけるハラスメントをめぐるトラブルやハラスメントを原因とする精神障害の発症が社会問題化しています。

職場におけるハラスメントの代表的な類型に、セクハラ(セクシャルハラスメント)、パワハラ
(パワーハラスメント)、マタハラ(マタニティハラスメント)があります。

セクハラ、マタハラは、男女雇用機会均等法にて、事業主の措置義務が明文化されています。パワハラは「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議」(厚生労働省)にて出された提言にて定義され、
「パワーハラスメント対策導入マニュアル」にて取組手順が示されています。

 

3. 労働安全衛生法と安全配慮義務

公法的規制としての「労働安全衛生法」とその関連法である「じん肺法」「作業環境測定法」「労働災害防止団体法」)は、最低の労働条準を定める取締法規であり、違反した場合には一定の範囲で刑事罰
の対象とされます。

私法的規制としての「安全配慮義務」ないし「健康配慮義務」に違反し、疾病の発生·罹患に至った場合には、企業は当該従業員に対して、民事上の損害賠償責任を負います。

企業が民事上の損害賠償責任を負う根拠には、「不法行為責任」と「契約責任」があります。

1975年の最高裁判決以降、契約責任による事案が増加の一途をたどっています。

最高裁判所が1975年2月25日に言い渡した判決において、「安全配慮義務」という概念を初めて認めました。

それ以降、わが国では、実定法上明文の定めがなされているのではなく、判例法理として認められてきましたが、2008年3月に施行された労働契約法に、以下のように明文化されました。

「使用者は労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう必要な配慮をするものとする」

これを健康管理の側面に着目して述べると、

「業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者(従業員)の心身の健康を損なうことがないよう注意(配慮)する義務」となります。

これにより、労働契約関係にある従業員のみならず、請負会社社員や派遣社員に対しても、安全配慮義務を負う可能性があります。

労働安全衛生法上の諸規定を遵守していたとしても、同法の規定は最低の労働条件基準にすぎないため、別途、安全配慮義務違反として民事上の損害賠償責任を問われる可能性が十分ありえます

 

4. 労災認定と民事訴訟

労災とは、業務に起因して労働者が負傷し、疾病にかかり、又は死亡することをいいます。

労災が発生した場合、従業員に損害を補償するシステムとして、労働基準法上の災害補償責任、民事上の損害賠償責任の2つがあります。

労災保険法に基いて保険給付が行われるためには、労働基準監督署長が「業務遂行性」と
「業務起因性」の存在を認めることが必要です。

 

5. 健康保持増進のための指針(THP)および快適職場づくり指針

「事業場における労働者の健康保持増進のための指針」( 1988年9月1日、労働省公示第1号)に基づいて
心身両面にわたる健康保持増進対策(トータルヘルス·プロモーション·プラン、THP)を進めることとされています。

推進する6種類の人材は以下の通りです

①産業医

②運動指導担当者

③運動実践担当者

④心理相談担当者

⑤産業栄養指導担当者

⑥産業保健指導担当者

THPの内容は、健康測定と健康指導(運動指導保健指導·メンタルへルスケア、栄養指導)に区分されます。

「事業者が講ずべき快適な職場環境の形成のための指針」(快適職場づくり指針)(1992年7月1日、労働省告示第59号)及び関係通達をふまえた取り組みが必要です。

「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(メンタルヘルスケア指針)(2006年3月31日、2015年11月30日改正)が示されています。

 

6. メンタルヘルスケアの具体的進め方

4つのケアは以下の通りです。

セルフケア:労働者自身がストレスや心の健康について理解し、自らのストレスを予防、軽減対処します。

ラインによるケア:管理監督者が心の健康に関して職場環境の改善や相談対応を行います。

事業場内産業保健スタッフ等によるケア:事業場内産業保健スタッフが事業場内の心の健康づくり対策の提言を行うとともに、その推進を担い労働者および管理監督者を支援します。

④事業場外資源によるケア:事業場外の機関および専門家を活用し、その支援を受けます。

 

7. 長時間労働者に対する面接指導

(a) 長時間労働者に対する面接指導(義務)

1週間あたり40時間の法定労働時間を超える時間外·休日労働時が1月あたり100時間を超え、かつ疲労の蓄積の認められる者であって、面接指導の実施の申出をした場合に、事業者は面接指導を実施する義務があります。

事業者は、面接指導の結果に基づいた医師の意見を聴き、必要な労働者に対して、当該労働者の実情を考慮して事後措置を講じなければなりません。

(b) 面接指導またはこれに準ずる措置(努力義務)

上記の対象者以外であっても、以下に該当する労働者に対しては、面接指導の実施または面接指導に準ずる措置を講ずるよう努めなければなりません(努力義務)。

①長時間の労働により、疲労の蓄積が認められ、または健康上の不安を有している労働者で申出のあった者。

②上記①に掲げる者のほか、
事業場において定められた
「面接指導の実施に関する基準に該当する労働またはこれに準ずる措置」の実施に関する基準に該当する労働者。

「面接指導またはこれに準ずる措置」の基準は、衛生委員会等で調査審議し、事業場において自主的な基準として定めます。

面接指導に準ずる措置とは以下の通りです。

①労働者に対して保健師などによる保健指導を行うこと。

②チェックリストを用いて疲労蓄積度を把握のうえ、必要な者に対して面接指導を行うこと。

③事業場の健康管理について事業者が産業医などから助言指導を受けること。

 

8. ストレスチェック制度

2014年の労働安全衛生法の改正にて、ストレスチェック制度が導入されました。

ストレスチェック制度は労働者のストレスの程度を把握し、労働者自身のストレスへの気づきを促すとともに、職場改善につなげ、メンタルヘルス不調を未然に防止すること(一次予防)を主な目的としています。

事業者は、常時50人以上の労働者を使用する事業場の労働者に心理的負荷を把握するための検査(ストレスチェック)を1年ごとに回実施しなければならなりません。(義務)

ストレスチェック制度では、労働者の健康情報の保護のため、労働者の同意なく、結果が事業者に提供されない仕組みとされています。

9. 自殺対策基本法とアルコール健康障害対策基本法

2006年に自殺対策基本法が施行され、2016年の改正により、自殺対策の理念が明確化、地域自殺対策推進の強化が盛り込まれました。

2013年にアルコール健康障害対策基本法が制定され、2016年にアルコール健康障害対策基本計画が定められました。

10. 改正障害者雇用促進法

2013年の障害者の雇用の促進等に関する法律の改正により、事業主による障害者に対する差別の禁止、雇用の分野における障害を理由とする差別的取扱いの禁止が規定され、障害者が職場で働くにあたっての支障を改善するための措置が定められました。

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